パンダ劇場

備忘録。大体ネタバレ。

https://www.tsuki-cinema.com/

 

二階堂ふみが演じる陽子がヤバそうで、宮沢えりが演じる洋子もなんだかイラッとする。そういえば「紙の月」で宮沢えりが演じた主人公は正義感が強すぎて募金に狂う学生時代を過ごすような子だったよなたしか、と、思い出す。

陽子がヤバいのは家庭環境から来ているようだ。給料が少ないから大変だとは思うが、親が嫌なら家を出ればいいのに大人なのだからと思ってしまう。小説で賞をとる前に、親の呪縛から抜け出そうぜ。

映画冒頭に震災の描写があり、また、子供を亡くしたような気配だったので、真実がわかるまで震災で子供を失った夫婦なのかと思っていた。紛らわしい描写をしないでくれ。

あの夫婦、三輪車や歩く子供に反応していたけど、亡くなった子は歩くことも出来なかったようだ。だから、意思疎通できない子をありのまま長生きさせたかったというよりも、三輪車に乗ったり歩いたりという一般的な生活の出来る子になって欲しかったという思いが強かったのかと思うと、やるせない気持ちになる。

洋子にイラッとするのはそういうところなのかな。以前、賞をとった小説は震災をテーマにしたもの(被災者ではないのに)だが、出版社の意向とはいえ綺麗事でまとめているという事にもなるほどと思った。

陽子も洋子も、何者かにならないと自分には価値がないと思っている。洋子の夫はそうではないと思っていた(だってオダギリジョーだから)が、同じような思考だった事が最後に解る。

洋子の夫は、作品を作りこれを仕事にしたいというのではなく、動画をネットにあげて少しでも多くの人に楽しんでもらいたいという訳でもなく、自分が納得する作品を作りたいというのでもなく、審査員という価値のある人に認められることで満足するのか。

自分は以前、憲法13条は「すべての人間は生まれながらにして価値がある」と解釈するのだと教わった。何者でなくても価値があるのだ。それを認識していないからグラグラする。そこがグラグラしてる人が障害者施設で働くのはあまりよろしくないと思うのだが、誰かを下に見ることで落ち着こうとしているのだろうか。マンション管理のおにいさんがまさにソレだったな。

初めはやる気満々でまともだったみたいな描写の「さとくん」だけど、障害者とはいえ大人向けに「花咲か爺さん」の紙芝居を読むって感覚は既におかしいぜ。その「さとくん」を演じる磯村くん、だんだんやばい目つき増えていくけど、やばすぎではない感じがちょうど良くてさすがだった。淡々と殺していくのだが、予想以上に体力を使い(多分気力も使い)疲労していくところが、(現実の事件を聞いて)想像した通りだった。

さとくんは「絵を描き続けていれば良かったのに」と同僚に言われていた。確かに何か打ち込むことがあれば間違った道に進まなかったかもしれない。でも何者かにならないと価値がないという考えのまま絵の道に進み、価値のある誰かに認められず、結局本人が納得するような「何者か」にならなかったらどうなるのだろう。

さとくんが知らなかった「優生思想」は、たしかに私も若い頃知らなかった。学校できちんと教えて欲しい。人権とか憲法13条の意味するところをきちんと義務教育で教えていないのも駄目よね。学校教育そのものが「ありのままの自分に価値がある」って方向性じゃないんだもん。頑張らないと駄目なんだもん。

おかしいといえば、日本の精神科病床が世界に比べて多すぎ問題。他国と比べて精神障害者を社会復帰させる環境を作るのがめちゃめちゃ遅れてるのは、政治の問題。

歴史や他国から学べば解決の糸口も見えてくるのに、そこを見ないで出口のない問題みたいに扱わないで欲しい。(メディアが)

施設の描写、NHKのドキュメンタリーで見た防犯カメラの映像や看護師の証言がこんな感じだったなーって思いながら見てたけど、アレ初めて見た人はびっくりよね。NHKのドキュメンタリーは「病院」だったけど。こういうものを映画として多くの人に見せて問題提起する意味はあるのだろうけど。

施設に行くまでの道が森の奥すぎるし、蛇とかミミズの描写大げさだし、職員の事務所暗すぎるだろ。その表現方法にはちょっと疑問。

映画見るまで読まずにいようと思っていた記事を読んてちょっと安心した。施設の現場の方の話。(引用サイトや動画は見てないけど)

https://note.com/tokyonitro/n/n44f6aa6caa2a

 

「障害が分かると95%以上の人が産まない道を選択」って台詞あったが、そもそも障害が分かったら産まない選択をするつもりの人しか出産前診断を受けないだろうから、そのパーセンテージに意味があるのかな?そもそも出産前診断を受けるのは全体の何%なのよ。

監督インタビュー

https://hitocinema.mainichi.jp/article/mainichifilmawards-interview-ishiiyuya