パンダ劇場

備忘録。大体ネタバレ。

怪物

観た後しんどくなるかも、、、という噂を聞いていたので、昼食はさっぱりしたもので済ませ臨んだが、覚悟していたからなのかしんどくはならず、むしろ観た後に爽快感を感じる程。

 

(以下、ネタバレ)

 

 

 

でもそれって自分の息子がとりあえず無事に成人しているからなんだろうな、息子がまだ小学生だったら、こんな平気で観ていられなかったかもしれない。自分の立場と被る登場人物が居なかったから俯瞰で見れたのだな。

あとやはり是枝監督作品は流れが心地よい。

爽快感は、最後に子供達が自分の気持ちに正直に動いていたからだと思う。最後のシーン、、、線路のフェンスがなかったから、もしかしたらあれはこの世ではないのかもしれないのだが、、、だとしても自分の意思で動いた結果であるのなら映画としてはスッキリなのだ。

あと、私自身の中でモヤっとしていたことがこの映画で表現されていて、そのことでスッキリしたというのもある。

 

いやでもほんと、子供達の事など大人は全然わかっちゃいない、保利先生悪い人じゃないけど浅いし、お母さんも頑張ってるけど方向違ってる。

大人達が子供の話聞いているようでちゃんと聞いていない、先生もお母さんも、もうちょっとゆっくり聞いて、待ってあげて、勝手に解釈しないで。湊くんが猫見てたから猫いじめたんじゃないか(だっけ?)みたいに勝手な解釈しないで。先生の勝手な解釈を「言ったよね?」っていってるよ。「そんなこと言ってない」よねぇ。

あの大人びた女の子、何もかも知ってそうじゃん、あの子にゆーっくり話聞けるといいのにね。急かさないでちゃんと待つのよ保利先生。

 

湊くん車から落ちるとかあんな異常なことしているのにお母さんなんで何も聞かないんだろ、って思うけど、日常に追われていたらそうなっちゃうのかな。何か特別な理由があるか死にたいかどっちかじゃん、死にたいのであればちゃんとゆっくり向き合わないとやばいし。

 

実際は特別な理由があった訳だけど、別に死んでもいいみたいなところもありそう。

日常のちょっとした会話から少しずつ追い詰めていたのはお母さんというのが恐ろしい。

 

子供達の心が複雑すぎて考えの浅い大人達には想像がつかない事になっている。

色んなほころびとかズレとか、そういうものを隙だらけの保利先生になすりつけてる、大人も子供も。

 

あと皆さん、噂話信じ過ぎだし盛ってるし。彼女と歩いてるだけでガールズバーに行った事になりそれもいつの間にかキャバクラになってる。

でも、校長先生が轢いたって話は本当みたいだなーこわいなー。

 

「男らしい」とか「男のくせに」みたいな台詞やたらと多いの気になっていたけどその展開になるのは全く予想つかずでこの辺は私もまだまだだな。

子供に「家庭を持って幸せになってほしい」的な話するのは、ダメだろーと私としては思っているのだが、割と同世代で子供にそういうこと言ってる人もいるみたいでびっくりする、ダメよね。

亡くなった人の思いを引き継ぐのもしんどい。それを糧にお母さんは頑張ってると思うんだけど、それ子供に言ったら追い詰めることになるよねぇ。

亡くなったお父さんがラガーマンだったというのがなんだかね、スポーツマンに割と多い感じなのよね、こういうのがね、私の偏見なんだけどね。

浮気相手(ダサいセーター着用)とのドライブ中に事故で、、、ってソレ、湊くんが知ってるってお母さん知らないんじゃないかなー。

 

コレ書くのに怪物のサイト見たけど、余計な事何も書いてなくていいな。是枝監督だからなー、余計なキャッチコピーや宣伝文句つくらなくても芸能人の感想載せなくても観る人はみるもんなー。

 

(追記)

ざっくり他の人の感想みたけど着眼点が色々なのね面白い。

でね、うーん、お母さんと先生、悪くない、のかなぁ。悪くない…んだけどさ、この二人にしっかりしていただかないと湊くんたちは救えないんだよ今のところ。

お母さんも先生も「どうしてそういう事をしたのか?」って何故ちゃんとゆっくり聞かないのか。子供自身だって解らないかもしれないし、上手く言葉に出来ないかもしれない。でも、子供自身がじっくり考えることも大事だから、すぐに答えは出なくても聞いた方が良いと思うのだがね。ちゃんとじっくり考えようよ。急いで解決しようとして、間違えた解釈するのが一番怖い。子供の気持ちちゃんと聞かずに判断してしまうの怖くないのかなぁ。

是枝監督の「そして父になる」の時も大人達が子供の気持ちをきちんと聞くシーンがなくてモヤっとしていた事を思い出していたのだが、それって是枝監督の作品がそうだというのではなく、現実の日常の大人達がそうなのか。

 

同じクラスの女の子が猫が死んでることを先生に報告して、湊くんがそこに居た、みたいな事を付け加えた時、あの時あの子はもっともっと色々話したいことがあったのでは?湊くんの隣の一番後ろの席であの子は何を見て何を思っているのかに先生は興味をもたないのか。「じゃあ湊くんがやったのか?」と、単純に話を結びつけちゃってすぐに話を終わりにしちゃう。そもそも「湊くんは星川くんをいじめている」という偏見があるから、まちがった情報でさらに真実がねじまがるのだな。

真実を知る機会はあちこちにちらばっていたのにそこを捉える力がない先生。もうちょっとだけ早く登校してたら星川くんがいじめられてる現場に立ち会えたというシーンもあった。ほんのすぐ後に現場来たけれどその場に残るいじめられていた雰囲気には気づかない。そういう先生だから子供たちも話さない。自分が居ないときに子供たちがどうしてるのかも気にならない。たまにちょっと早めに教室行くとかすれば星川くんのいじめに気づけたかもしれない。でもそういうことはしない。そういう先生である事は子供達も知っている。あの先生、悪い人じゃないんだけど鈍い。だからうまくやればいじめは気づかれない。何かあったら保利先生のせいにすればいいんだ…ってなる。そういう先生だって解っていながら他の先生もサポートしてないのだろう。学校がそういう仕組みになってないし、先生達は余裕ないんでしょ?

 

保利先生が気づかないのなら、他の大人が星川くんへのいじめに気づく機会はなかったのか。

星川くんへのDVに誰か大人が気づく機会はなかったのか。

健康診断とかで大人が星川くんのアザに気付く機会はなかったのか。

星川くんのおばあちゃんは?近所の人は?スクールカウンセラーは?

子供を守るための様々な仕組みが全然機能していない。

 

男の子は男の子らしく、大人になったら家庭を持つ、、、多くの人が当たり前だと思って何気なく口にしているみたいだけど、言われた方はしんどいぜ、よく言えるよ。異性が好な人だってしんどいって。

 

亡くなったスポーツマンのお父さんと1人で頑張るお母さんの想いは湊くんにはしんどいよな、死んじゃってる人には反抗もできない。お母さんはお父さんの事悪く言わないけど、浮気相手と一緒にいるところに事故ったなんて、お父さんの事どう思ったら良いかの整理がつかない。そこには触れずにお父さんの良かったところだけ言って毎日過ごす…って、敏感な子にはしんどい、でも一見何も問題ない良いお母さんだからお母さんから言われたことがしんどいのは僕が悪いからだ…お父さんの遺言を叶えることができないのは僕のせいだってなってるもんね。

 

「あの子は突然大事な人が居なくなるという経験をしてるから繊細なんです」みたいなことお母さん言ってたけど「はぁ?」って思ったなぁ。その繊細な子に浮気したお父さんの身勝手な理想押し付けてるの?っていうところ。あと、先生に酷いこと言われたと聞いてすぐに学校に言いに行くこと。あれ、湊くんに確認してないよねぇ。繊細な子だと思ってるなら親が学校に行く前に本人に聞いてみようよ。たまたま前の担任の先生がいい先生だったというだけでその学校の先生がいい先生だなんて思える?学校の先生なんて信用できないぜ。親が学校になにか言った事で子供の色んな状況変わっちゃうかもしれない。言うべきではないという訳ではなく、そこは慎重にいかないと。子供とちゃんと作戦会議してから乗り込まないと。

繊細だから思ったこと言えないからお母さんがやってあげる…じゃなくて、繊細な子だからこそ本人の気持ちをいちいち確認しながら慎重に進めようよ。お母さんが思っているより湊くん、成長している。

 

事前に「保利先生がガールズバーに言ってる」って噂吹き込まれてる時点でイメージ悪くなってる保利先生。そこへ子供から酷いこと言われたと聞いてすぐにカーッとなっちゃったわよね、そういうの気をつけなきゃなーって常々思う。人の噂話はまともに聞いちゃいけねぇな。そのせいでお母さんが学校に言いに行くスピードはかなり早まってる。立ち止まって考えるのをすっ飛ばしちゃった。

お母さん2回目からスーツ着て学校行ってるの戦闘態勢に入ったんだなーっていう。相談する人いないとネットの情報とかだけで突っ走りがち。でもだってお母さん誰かにゆっくり相談する時間もないだろうし。ママ友のアドバイスなんてテキトーだろうし。

まあでも学校がちゃんと子供達に聞き取り調査すればいいのにやらないのがまず第一の問題。「豚の脳」と「鼻の怪我」は別の話。一つづつきちんと検証しよう。「鼻の怪我」についてはクラスの子は皆見てたのに。間違ったまま事が進むって、社会なんてそんなものだと子供達に示しちゃっていいの?

こっそり匿名で報告するシステムもないのか。忙しいから?何で忙しいの?コレについてちゃんと考えるの大事ぢゃん。何が中学受験だよ。

 

ガールズバーの件は、ちょっと派手な彼女と先生が歩いている所をみた子供が勝手に言っていただけで。その子がお母さんに言ったのかな?そんなこと本当かどうか子供に解るわけないのに面白ネタだから真偽を確かめることなく他のお母さんに言うのもひでぇよな。これが「怪物」なのか?(多くの人が無意識にやっているこういう事についてもっとちゃんと考えようよ。拡散だよなコレも。)しまいには「キャバクラ」に行ってるという話になっているし。「ガールズバー」でも「キャバクラ」でもまぁどっちでもいいけど値段が違うのかな。いずれにせよそういうところに行っている先生という嘘のフィルターを通して初めから見てるという事。

 

亡くなったお父さん、さぞかし立派なお父さんかと思いきや浮気相手とドライブ中に事故だと?そんなお父さんのこと良く言えるってお母さんちょっとオカシイって。まあ、お父さんの事子供に悪く言いたくないと言う気持ちはよく解るけど、色んな思い封じ込めて頑張っていいお母さんしてるんだろうけど…あぁそうか、根本的に物事を考えるとしんどいから深く考えずに「男らしく」とか「家庭を持って」とか言っちゃうのかな。湊くん浮かない顔してるちゃんと見て、現実と向き合って。

間違った方向に頑張ってると私が思うのはそういうことで、一般的ないいお母さんとか頑張るお母さんとかいい家庭に見えるよう頑張るのではなく、自分や息子は本当はどう思ってるのとかどうしたら気持ちが楽になるとかそっち…内面的なものに向けて頑張った方が良いのではということなのだ。

湊くんが学校行きたくないとき、ちゃんと話も聞かずに休む選択肢与えてくれなかったよね。いつもちゃんとしてる子が病気じゃないけど行きたくないって言ってるのだよ朝にゆっくり話聞く時間ないのは仕方ないけど、1人でお留守番できる年齢でしょ、別に休ませればいいじゃん、心が疲れてるんだろうからちょっと休もうかでいーじゃん、帰ってきてから話聞くからでいーじゃん。そこは子供を信用してるかどうかじゃね?色んな理由があって学校行きたくない僕をお母さんは認めてくれてない理由も聞いてくれないって事だぜ。甘やかしちゃ駄目、みたいな感じがなー、ちょっと昭和の体育会系なんだよなー、それゆえの夫がラガーマンという設定?これを気に不登校になる心配があるのは解るけど、心が壊れないようにするのが一番大事。

 

なーんて思うけど毎日の生活に追われてそんな余裕ねえよ、先生もお母さんも。

 

まずは、先生とお母さんに余裕が出るシステムにしてくれ社会を。

お母さんも学校も「こうあるべき」みたいなドラマや映画の姿に振り回されないように、メディアの決めつけをどーにかしてくれ。

あとは、親や先生以外の大人が子供と関わる機会、なのかなー、何かこう、気づく大人を周りに、どーにか。

不確定な噂を広めぬ様に、簡単に信じない様に。

あとさ、子供らの価値観よね。男らしくないからいじめるとかあるの?小学生でそういう学習してる筈じゃん?あー、でも保利先生も人間ピラミッドの時に「男らしくない」とか言ってたな。そういうちょっとしたことの積み重ねよねー。あの危険なピラミッド今だに続けてる学校も保利先生も色々と学び直さないとダメじゃん。

本気で大人達が価値観を塗り直さないとヤベェよ。

 

https://gaga.ne.jp/kaibutsu-movie/

 

(さらに追記)

この記事面白かった。

映画公開されてしばらく経ってから、どう伝わったか、宣伝の方法はこれで良かったのかという議論を一般に公開する、、、という感じなのかな。一般民としては、「自分は」面白かった、面白くなかった、好き、嫌いだけで映画を判断して終わりにしていたのだが、自分と違う立場の人がどう見るのか、どう感じるのかといったことを提示されていたのだハッとさせられた。

https://digital.asahi.com/articles/ASS323PGSS2WULLI00F.html?ptoken=01HS0GTC1MMNQ9QPKFGJ6YRY38