パンダ劇場

備忘録。大体ネタバレ。

影裏

原作未読。予告からの予想とは違っていた。予想よりは好きな方向性。
あれやこれやの地方の闇を綺麗な景色で包み込んだ映画。

(以下、ネタバレ)

日浅(松田龍平)が、その辺に居そうな地方男子で絶妙。

「課長いなくなった」という予告で見た台詞で日浅は職場の課長だと思ったら段ボール畳むのが上手だから『段ボール課長』ですって、ふふふ。

東京に4年居たから訛りがなくなったと言うがいやいやちょっと訛ってるってw、と、思わせといて転職したら訛りがもっと強くなりこれが本当の訛りだなと再認識。(地方で営業の仕事すると訛りが強くなる。多分その方が客受けが良いのだろう。)

男性の中途採用となると訪問営業。ですよね地方ではそればっか。もともとの人懐っこさで最初はうまく契約とれて『俺、仕事出来る男』感出すけどそんなのいつまでも続かずだんだん追い詰められてく。(WOWOWドラマ「そして、生きる」にもそんな地方男子いたね。)彼の為には断った方が良いと思うが、断れず契約しちゃう知人達。そんな彼を正社員チラつかせながら使い捨てにする会社。

契約して仲良くしてたおじさん、子供に色々言われたのだろう。解約された様子。そうなってしまえば、おじさんにとって彼は関わりたくない他人になってしまう。あんなに親しくしてたのに。

職場を急に辞めても「(ここは)出世できない職場だから仕方ないよね(きっとどこか別のマシなところで働いてるよ)」で流されてしまう30代リアル。(別のマシなところなんてないのに)

貸したお金30万。子持ちパートがギリギリ出せるリアリティある金額。

パートのオバチャンと出来てたみたいでなかなかやるじゃん(オバチャンが)。

日浅のご家族の逃げっぷり。お母さん居なくて男家族だけだと現実からついつい逃げちゃう…という映画を前に見たことがあるが(妻夫木さんと池松さんが出てたヤツ)そういう感じか?
多分きっと彼は津波に流されてる。でもその事を認めたくなくて、あいつはズルいヤツだからどこかで飄々と生きているんだ…と思うことで気持ちを保っている。

もしかしてこういう人は沢山いて、行方不明者は数値で出てくる人数よりも多いのかもしれない。

だよな。沿岸に住んでた訳ではなくあの日ふらっと沿岸に出かけて休日過ごしてたら解んないよ。

お父さんには彼の事情をちゃんと聞いて欲しかった。(それにお父さんなら30万出せそうだから代わりに返してほしい。)

回覧板のおばちゃんは切ない。こういう事で細かく言ってくる人って余裕がないんだよね。でも怒ったり悪く言ったりしてるから周りが避けていってどんどん孤立する悪循環。孤独死だったのかな。

クリーニング業者も余計な事は言わない。地方だからこそ、余計な事言うと噂になるから注意深い。意外と真相が解らないという事は多い。

綾野剛が美脚。

BLが判明した後も日浅は変わらず友達関係続けてくれたの良かったよね。

今野については過去に色々あったんだろうけど、まぁそういう事情ならいたしかたないので、転勤を機に人付き合いも入れ換えちゃって地方で一人で釣り三昧ってのも悪くないよねなどと考えてたらちゃっかり彼氏作ってたみたいで良かったよね。

最後にお魚(ヤマメ?)リリースしたのは日浅に例えてるみたいだった。生きてるか死んでるか解らないけど彼は今は何にも縛られず自由なんだ。(そう思ってないと残された者はやってらんない。)

※ 以前、noteに書いていたものをちょっと手直しして転載しました。